コンピューターが行う計算を''演算''といいます。
演算に用いられる記号を''演算子''といい、いろいろな種類があります。
*代入演算子 [#zf9064ef]
変数のところでも出てきましたが、代入にはイコール ''='' を用います。
変数名 = 式;
左辺は、値が代入される「変数の名前」です。
右辺は、変数の代入のところでは「代入する値」と説明しましたが、正しくは「式」です。
式が計算され、その結果の値が代入されます。
*算術演算子 [#e758e0af]
数値同士の演算(算術演算)を行う演算子を''算術演算子''といいます。
算術演算子には、次のようなものがあります。
|種類|演算子|使用例|意味|h
|加算|+|a + b|aとbの和を求める|
|減算|−|a − b|aとbの差を求める|
|乗算|*|a * b|aとbの積を求める|
|除算|/|a / b|aをbで割ったときの商をを求める|
|剰余算|%|a % b|aをbで割ったときの余りを求める|
たとえば、整数の加算を行うプログラムは、次のようになります。
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void) {
int i = 3, j = 5;
int k = i + j;
printf("%d + %d = %d\n", i, j, k);
return 0;
}
}}
このプログラムを実行すると、次のようになります。
#geshi(sh){{
luna% a.out
3 + 5 = 8
}}
小数の演算も整数と同じようにできますが、剰余算だけは整数でしかできません。
たとえば、次のようなプログラムを考えてみます。
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void) {
double d = 3.0, e = 5.0;
double f = d % e;
printf("%f \% %f = %f\n", d, e, f);
return 0;
}
}}
このプログラムをコンパイルすると、次のようなエラーが出ます。
#geshi(sh){{
luna% gcc mod.c
mod.c: In function 'main':
mod.c:5: error: 二項演算子 % が不適切です
}}
**練習1 [#s1385d6c]
[math]5 - 3[/math]を計算するプログラムを作成し、実行せよ。
**練習2 [#zc44c640]
[math]1.5 \times 3.2[/math]を計算するプログラムを作成し、実行せよ。
*算術演算の結果の型 [#i9224264]
int型の値とint型の値の算術演算を行うとその結果はint型になり、double型の値とdouble型の値の算術演算を行うとその結果はdouble型になります。
int型の値とdouble型の値の算術演算を行うと、int型の値がdouble型の値に暗黙的に変換され、その結果はdouble型になります。
注意が必要なのは、int型の値をint型の値で割ったときです。
たとえば、次のプログラムについて考えてみます(プログラム1)。
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void) {
double d = 3 / 2;
printf("d = %f\n", d);
return 0;
}
}}
このプログラムを実行すると、次のようになります。
#geshi(sh){{
luna% a.out
d = 1.000000
}}
普通に考えると[math]3 \div 2 = 1.5[/math]ですが、int型の値とint型の値の算術演算の結果はint型になるので、3 / 2の結果が1になり、これがdouble型に暗黙的に変換されています。
これを避けるためには、いずれかの値(あるいは両方の値)をdouble型にします(プログラム2, 3)。
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void) {
double d = 3 / 2.0;
printf("d = %f\n", d);
return 0;
}
}}
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void) {
double d = 3.0 / 2;
printf("d = %f\n", d);
return 0;
}
}}
**練習3 [#u9810330]
プログラム1を作成し、実行結果を確認せよ。
また、作成したプログラムをプログラム2, 3のように変更し、実行結果を確認せよ。
*明示的型変換(キャスト) [#o3c3bd5a]
int型の値をint型の値で割ってdouble型の値の結果を得たいときには、''明示的型変換''(''キャスト'')を行います。
キャストは、次のように、変換後の型をカッコ ''( )'' で囲んで変数名の前に書きます。
(型) 変数名
たとえば、int型の値をint型の値で割ってdouble型の結果を得るには、次のようにします(プログラム4)。
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void) {
int i = 3, j = 2;
double d = (double) i / j;
printf("d = %f\n", d);
return 0 ;
}
}}
これを実行すると、割り算が行われる前にキャストによって変数iの値がdouble型に変換され、これを変数jの値で割ってその結果を求めます。
double型の値とint型の値の計算になるので、int型の値がdouble型に自動的に変換され、結果はdouble型の値になります。
**練習4 [#t73d1c8b]
プログラム1をプログラム4のように変更し、実行結果を確認せよ。
**演習5 [#f4528a06]
int型の変数に5を代入し、複合代入演算子を用いてその変数に4を加えるプログラムを作成し、実行結果を確認せよ。
*演算子の優先順位 [#jb6c81ee]
演算子に優先順位があります。
数学における計算の優先順位と同じように、算術演算子においては*や/のほうが+や-よりも優先順位が高いです。
優先順位が低い演算を先に行う場合は、次のように、優先する演算をカッコ ''( )'' で囲みます(プログラム5)。
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void){
int i = 1 + 2 * 3, j = (1 + 2) * 3;
printf("i = %d, j = %d\n", i, j);
return 0;
}
}}
このプログラムを実行すると、次のようになります。
#geshi(sh)){{
luna% a.out
i = 7, j= 9
}}
これまでに出てきた演算子の優先順位は、次のようになります。
|優先順位|演算子|使用例|意味|h
|2|+|+a|正の数|
|~|−|−a|負の数|
|3|()|(b) a|キャスト|
|4|*|a * b|積|
|~|/|a / b|商|
|~|%|a % b|剰余|
|5|+|a + b|和|
|~|−|a − b|差|
|15|=|a = b|代入|
1から順に並んでいないのは、まだ勉強していない演算子があるからです。
正の数、負の数を表す演算子は、作用する相手(項)が一つしかないため、''単項演算子''といいます。
作用する相手が二つの演算子は''二項演算子''といいます。
(まだ出てきていませんが,三項演算子もあります。)
演算子の+と−は,単項演算子としても二項演算子としても使われ,単項演算子として使われるときと二項演算子として使われるときでその働きが異なります。
**演習6 [#wc37d442]
プログラム5を作成し、実行結果を確認せよ。
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*誤差(おまけ) [#l369e7c2]
10進数の[math]0.1[/math]を2進数に直すと、[math]0.0001100110011\dots = 1.10011001100\dots \times 2^{-4}[/math]となり、有限の桁数では表すことができません。
double型の仮数部は52ビットですから、double型の仮数部に収めることができません。
そこで、このようなときには、仮数部に収めることができなかった部分を丸め込み、無理やり仮数部に収めます。
(10進数の四捨五入のような感じで、2進数で''最近接偶数丸め''という方法が使われます。)
このため、double型の変数に10進数の[math]0.1[/math]を代入すると、ごくわずかですが、''誤差''が生じます。
次のプログラムは、[math]0.1[/math]をdouble型の変数に代入し、小数点以下30桁まで表示します(プログラム6)。
#geshi(c){{
#include <stdio.h>
int main(void) {
double d = 0.1;
printf("d = %.30f\n", d);
return 0;
}
}}
(小数点以下の桁数を指定する方法については、後できちんと勉強します。)
このプログラムを実行すると、次のようになります。
#geshi(sh){{
luna% ./a.out
d = 0.100000000000000005551115123126
}}
このような丸めによって生じた誤差を''丸め誤差''といいます。
この他にも、コンピューターで計算すると幾つかの種類の誤差が生じることがあります。
誤差についての詳しいことは、計算機アーキテクチャーや数値解析の授業で勉強してください。
**演習7 [#v7fa458e]
プログラム6を作成し、実行結果を確認せよ。
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*まとめ [#o1a9a495]
コンピューターが行う計算を''演算''といい、演算に用いられる記号を''演算子''といいます。
''代入演算子''は代入を行う演算子、''算術演算子''は算術演算を行う演算子です。
int型の値とint型の値を演算した結果はint型に、double型の値とdouble型の値を演算した結果はdouble型になります。
int型の値とdouble型の値を演算すると、暗黙的型変換によってint型の値がdouble型の値になり、結果はdouble型になります。
int型の値とint型の値をdouble型にして演算したい場合には、''明示的型変換''(''キャスト'')を用い、値の前に () をつけて () の中に変換後の型を入れます。
キャストも演算子の一つです。
演算子には''優先順位''があり、優先順位の低い演算を先に行うときはその部分を () で囲みます。
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*練習問題 [#y6a5e51a]
**02B-1 加算(難易度♠) [#mb555b8c]
3 と 5 の和を求め、その結果を出力せよ
演算の練習問題は[[こちら>/授業/C言語基礎/演算/練習問題]]。
**02B-2 減算(難易度♠) [#y7494fd3]
3.5 と 2.5 の差を求め、その結果を出力せよ
**02B-3 除算(難易度♠) [#w2f5f35a]
20 を 3 で割り、その結果を出力せよ
**02B-4 剰余算(難易度♠♠) [#db297f4a]
10 を 3 で割ったときの余りを求め、その結果を出力せよ
**02B-5 キャスト(難易度♠♠) [#de4e69a4]
キャストを用いて 30 / 4 の結果を正確に求め、その結果を出力せよ
**02B-5 優先順位(難易度♠♠) [#i0286df1]
1 + 2 に 3 をかけ、その結果を出力せよ