授業/C言語基礎/数当てゲーム のバックアップ(No.5)


これまでに勉強したことを使って、次のような簡単な数当てゲームを作ります。

 コンピューターがある数を一つ決め、プレイヤーがその数を当てます。
 コンピューターは、プレイヤーが答えた数が正解よりも大きいか小さいかだけを教えます。

実行結果をイメージする

プログラムを作るときは、まず、プログラムの実行結果をイメージします。

このプログラムを実行すると、まずはじめに、コンピューターが正解の数を決めます。 とりあえず、正解の数を33として話を進めます。

次に、コンピューターが、プレイヤーに数の入力を要求します。 入力を要求するメッセージは次のような感じにしましょう。

整数を入力してください:

ここで、プレイヤーが99と入力したとすると、99は正解の33より大きいので、「大きすぎる」というメッセージを出力し、もう一度、プレイヤーに入力を要求するメッセージを表示します。

整数を入力してください:
99
大きすぎます
整数を入力してください:

今度は、プレイヤーが11と入力したとすると、11は正解の33より小さいので、「小さすぎる」というメッセージを出力し、もう一度、プレイヤーに入力を要求するメッセージを表示します。

整数を入力してください:
99
大きすぎます
整数を入力してください:
11
小さすぎます
整数を入力してください:

プレイヤーが正解を入力すると、「正解」というメッセージを出力し、プログラムを終了します。

整数を入力してください:
99
大きすぎます
整数を入力してください:
11
小さすぎます
整数を入力してください:
33
正解!

このように、実行結果をイメージすることで、プログラムの中で、どんな処理が行われるのか、どんな処理が繰り返されるのかが、ある程度わかります。

フローチャートを作る

次に、イメージした実行結果になるように、プログラムのフローチャート(またはアルゴリズム)を考えます。

このプログラムは、二つの部分に分けることができます。

  1. コンピューターがある数(正解)を一つ決める
  2. プレイヤーが答える

最初の、コンピューターがある数(正解)を一つ決めるところは、計算ゲームと同じように、乱数を使えばできます。 乱数の使い方がわからない場合は、自分で正解の値を決めてもかまいません。

その次の、プレイヤーが答えるところは、これまでに勉強した制御構造(条件分岐と繰り返し)を組み合わせて作ります。

この部分の中心は、ユーザーが答えて、それが正解よりも大きいか小さいかを教えるというものですから、キーボードからの入力と条件分岐を組み合わせると、次のようになります。

  1. scanf関数でキーボードから入力する
  2. if文で入力された数と正解を比べる
    • 入力された数が正解よりも大きいならば、「大きすぎる」と表示する
    • 入力された数が正解よりも小さいならば、「小さすぎる」と表示する

これを、正解が入力されるまで繰り返します。

この流れを、そのままフローチャートにすると、次のようになります。

number1.png

ところが、これだと、繰り返しの部分がC言語の繰り返し処理のフローチャートと対応していないので、プログラムとして書きにくいです。

そこで、繰り返しの文をC言語の繰り返し処理のフローチャートに対応するように、フローチャートを書き直します。

number2.png

プログラムを作る

フローチャートができたら、プログラムを作ります。

乱数を使って正解の数を決める部分だけを作ると、次のようになります。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

int main(void) {
  int r;

  srand((unsigned int) time(NULL));  // 乱数のシード
  r = rand() % 100 + 1;

  return 0;
}

ここでは、正解の数は、1から100までの整数としています。 rand関数、srand関数、time関数の使い方については、計算ゲームを復習しましょう。 (ここで、一度コンパイルして、エラーがないか確認します。)

次に、その後の繰り返し処理を形だけ作ります。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

int main(void) {
  int r;

  srand((unsigned int) time(NULL));  // 乱数のシード
  r = rand() % 100 + 1;

  while (1) {


  }
  printf("正解!\n");

  return 0;
}

while文の繰り返し条件が1になっているのは、コンパイル時にエラーにならないようにするためです。 条件は後で作り直します。 忘れないように注意しましょう。 (ここで、もう一度コンパイルして、エラーがないか確認します。)

while文の形ができたら、先に、繰り返し処理の中を考えましょう。 繰り返し処理の中だけを考えると、次の3つの処理が必要になります。

  1. プレイヤーに入力を要求するprintf関数
  2. プレイヤーの答をキーボードから入力するscanf関数
  3. 大きいか小さいかを判定するif文

したがって、繰り返し処理の中は、次のようになります。

  printf("1から100までの整数を入力してください:\n");
  scanf("%d", &a);
  if (a > r) {
    printf("大きすぎます\n");
  } else if (a < r) {
    printf("小さすぎます\n");
  }

ここで、a はプレイヤーが入力した数を記憶しておくための変数です。

そこで、これをwhile文の波括弧 { } の中にいれて、新しく登場した変数 a の宣言を追加します。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

int main(void) {
  int r, a;

  srand((unsigned int) time(NULL));  // 乱数のシード
  r = rand() % 100 + 1;

  while (1) {
    printf("1から100までの整数を入力してください:\n");
    scanf("%d", &a);
    if (a > r) {
      printf("大きすぎます\n");
    } else if (a < r) {
      printf("小さすぎます\n");
    }
  }
  printf("正解!\n");

  return 0;
}

(ここで、もう一度コンパイルして、エラーがないか確認します。)

正解でない間、繰り返すので、繰り返し条件は「a と r が等しくない」という式になります。 また、最初は、繰り返し条件を必ず満たすようにしなければならないので、a の値を1から100まででない値に初期化します。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

int main(void) {
  int r, a;

  srand((unsigned int) time(NULL));  // 乱数のシード
  r = rand() % 100 + 1;

  a = -1;
  while (a != r) {
    printf("1から100までの整数を入力してください:\n");
    scanf("%d", &a);
    if (a > r) {
      printf("大きすぎます\n");
    } else if (a < r) {
      printf("小さすぎます\n");
    }
  }
  printf("正解!\n");

  return 0;
}

これで完成です(プログラム1)。

プログラムができたら、コンパイルして、エラーを直します。 途中で何度かコンパイルしてそのたびにエラーを直しておくと、一度にたくさんのエラーがでないのでエラーを直しやすいです。

演習1

プログラム1を作成し、実行結果を確認せよ。

プログラムをテストする

プログラムが完成したら、何度か実行して設計図(フローチャート)と同じ動きをするかどうかを確認します。 これをテストといいます。

テストでは、まず、プログラムをモジュールに分割し、モジュールごとにテストを行います。 これを単体テストといいます。

単体テストのやり方はいくつかありますが、その中に、ブラック・ボックス・テストホワイト・ボックス・テストがあります。 これはこの後で説明します。

すべてのモジュールのテストが終わったら、モジュールを組み合わせてテストを行います。 これを結合テストといいます。

このプログラムは、次の二つのモジュールに分割できます。

  1. コンピューターが乱数で問題を生成する
  2. プレイヤーが答えて判定する

そこで、まず、コンピューターがきちんと問題を生成できているかどうかを確認します。

乱数を生成した後にprintf関数を置いて生成された数を表示し、これを何回も繰り返し実行して生成された数が1から100までの数であることを確認します(プログラム2)。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

int main(void) {
  int r, a;
  int i;  // テスト用

  srand((unsigned int) time(NULL));  // 乱数のシード

  // テスト用
  for (i = 1; i <= 1000; i++) {
    r = rand() % 100 + 1;
    printf("# r = %d\n", r);
    if (r < 1 || r > 100) { exit(1); }
  }

  /*
  r = rand() % 100 + 1;
  */

  a = -1;
  while (a != r) {
    printf("1から100までの整数を入力してください:\n");
    scanf("%d", &a);
    if (a > r) {
      printf("大きすぎます\n");
    } else if (a < r) {
      printf("小さすぎます\n");
    }
  }
  printf("正解!\n");

  return 0;
}

if文の中のexit関数は、プログラムの実行を終了する関数です。

テスト用のコードが間違えていると、正しくテストができませんので気をつけましょう。

また、テストが終わったらすぐに元に戻せるように、元のプログラムはコピーしてコメント・アウトしておきます。

演習2

プログラム1をプログラム2に変更し、テストを実行せよ。

ブラック・ボックス・テスト

コンピューターが問題を正しく作成できることを確認したら、続いて、プレイヤーの答を入力して正しく判定できるかどうかを確認します。

コンピュータが問題を正しく生成できることは確認済みなので、テストを行うために、正解を真ん中くらいの適当な数に固定します。 ここでは、実行結果をイメージするときに使った33とします(プログラム3)。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

int main(void) {
  int r, a;

  srand((unsigned int) time(NULL));  // 乱数のシード
  r = rand() % 100 + 1;
  r = 33;  // テスト用

  a = -1;
  while (a != r) {
    printf("1から100までの整数を入力してください:\n");
    scanf("%d", &a);
    if (a > r) {
      printf("大きすぎます\n");
    } else if (a < r) {
      printf("小さすぎます\n");
    }
  }
  printf("正解!\n");

  return 0;
}

ブラック・ボックス・テストは、プログラムの中身をわからないものと考えて、仕様に決められたとおりの動きをするかどうかを確認します。

ブラック・ボックス・テスト用のテスト・ケースを作成する方法として、同値分割法境界値分析があります。

同値分割法では、入力データを仕様に基づいてグループに分割し、各グループの代表値を用いてテストを行います。

ここでは、正解よりも大きい数、正解よりも小さい数、正解と同じ数という3つグループが考えられます。 そこで、正解よりも大きい数の代表として99、正解よりも小さい数の代表として11、正解と同じ数(の代表)として33を選び、これらをテスト・ケースとします。

テスト・ケースを選んだら、テスト・ケースを順番に入力し、実行結果を確認します。

luna% a.out
整数を入力してください:
99
大きすぎます
整数を入力してください:
11
小さすぎます
整数を入力してください:
33
正解!

境界値分析では、境界値を用いてテストを行います。

ここでは、正解よりも小さい数と正解の境界値である32と33、正解と正解よりも大きい数の33と34をテスト・ケースとします(33は重複しているので、テスト・ケースは3つになります)。

テスト・ケースを選んだら、テスト・ケースを順番に入力し、実行結果を確認します。

luna% a.out
整数を入力してください:
32
小さすぎます
整数を入力してください:
33
正解!
luna% a.out
整数を入力してください:
34
大きすぎます
整数を入力してください:

演習3

ブラック・ボックス・テストの同値分割法と境界値分析を用いて、プログラム3のテストを行え。

ホワイト・ボックス・テスト

ホワイト・ボックス・テストは、プログラムの制御構造に基づいて、決められたとおりの動きをするかどうかを確認します。

ホワイト・ボックス・テスト用のテスト・ケースを作成する方法として、ステートメント・カバレッジ命令網羅)とブランチ・カバレッジ分岐網羅)があります。

ステートメント・カバレッジでは、すべての命令文(ステートメント)が一度は実行されるように(命令文をすべてカバーするように)テスト・ケースを作成します。

プレイヤーが答えて判定する部分には、1つの代入、4つのprintf関数、1つのscanf関数と合計6つのステートメントが含まれています。 そこで、この6つのステートメントをできる限り多くカバーするようにテスト・ケースを作成します。

最初の代入、printf関数、scanf関数は、入力データに関係なく実行されるので、考える必要はありません。

2番目の「大きすぎる」と出力するprintf関数は、入力データが正解よりも大きいときに実行されるはずなので、正解よりも大きい数をテスト・ケースとして用意します。 ここでは、99とします。

3番目の「小さすぎる」と出力するprintf関数は、入力データが正解よりも小さいときに実行されるはずなので、正解よりも小さい数をテスト・ケースとして用意します。 ここでは、11とします。

最後の「正解」と出力するprintf関数は、入力データが正解に等しいときに実行されるはずなので、正解と同じ数をテストケースとして用意します。 ここでは、33です。

テスト・ケースを選んだら、テスト・ケースを順番に入力し、命令文が正しく実行されることを確認します。

luna% a.out
整数を入力してください:
99
大きすぎます
整数を入力してください:
11
小さすぎます
整数を入力してください:
33
正解!

すべての命令文を実行できたので、このテストのステートメント・カバレッジは100%です。

ブランチ・カバレッジ分岐網羅)では、フローチャートのすべての分岐を通るようにテスト・ケースを生成します。

フローチャート2に基づいて、次のようなケースを用意すると、すべての分岐を通ります。

  1. 入力された数が正解よりも大きい場合
  2. 入力された数が正解よりも大きくない、かつ、正解よりも小さい場合
  3. 入力された数が正解よりも大きくない、かつ、正解よりも小さくない場合(つまり、正解に等しい場合)

すると、テスト・ケースは 99, 11, 33 とすればいいことになり、ステートメント・カバレッジと同じになりました。

つまり、このテストは、ステートメント・カバレッジが100%で、ブランチ・カバレッジも100%です。

演習4

ホワイト・ボックス・テストのステートメント・カバレッジとブランチ・カバレッジを用いて、プログラム3のテストを行え。

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