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大学の研究室はプロの社会への入り口

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東京大学教授の宮田秀明さんが,日経ビジネス・オンラインのコラムで,研究室で行った沖縄合宿について書かれています.

研究室に所属している学生やこれから研究室を選ぶ学生は読んでおくといいでしょう. 指導教員がどんなことを考えているのか,すこし分かると思います.

世界に追いつくための3日間合宿

この旅行の目的は二つあった。一つは一緒に行動して楽しんでチームワーク力を高めることだが、もう一つは研究を通して1人前のプロになるための基本を理解し身につけてもらうことだった。

1人ひとりが1人前のプロになる

若い学生たちが食べ残すぐらいのたくさんの安くておいしい食事の後だったので、どこまで分かってくれたか難しいところだが、プロとはどういうことかを少しは感じとってくれたようだ。大学の研究室はプロの社会への入り口だ。

英語で書かれた論文にしか国際的な価値はない

和文で書かれた研究成果には国際的な価値はない。世界のトップを目指すためには、国際語である英語で書かれた論文の最も優れたものを探し、読んで理解し、私たちの研究と比較し、研究の競争に勝たねばならない。

世界のトップ5が誰かを知る

学問の世界のヒエラルキー構造も理解してほしかった。世の中には無数の研究者、無数の論文がある。しかし、普通、ある研究社会をリードしているのは5人ぐらいの先端の人。誰がトップ5かを早く知らなければならないのだ。業績作りのためだけのつまらない論文も多いし、論文を書くことしかできない、つまり社会で役立つ仕事のできない研究者も多い。

常に世界のトップを探し出して、このような人と競うための習慣を身につけて欲しいのだ。

「大学の研究室はプロの社会への入り口だ」というのは,私が学生のときにお世話になった教授も同じことを言っていました. 私も使わせていただいています.

研究室に所属している学生は,「研究なんて就職したら関係ない」などと思わず,「この研究が上司から頼まれた仕事だったらどうするか」という気持ちで,研究に取り組んだらいいと思います.

研究そのものに価値を見出してくれるのが一番いいんですが,これがなかなか難しい.

人工知能は科学だ

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「FRINGE / フリンジ」という海外ドラマのDVDが日本でも発売されます.

まずは,Amazon.co.jpで公開されているプロモーション・ビデオ「『FRINGE / フリンジ』とは?」(4分46秒)を最後までご覧ください. お急ぎの方は4分20秒ぐらいから.

最後に,タイトルである「FRINGE / フリンジ」という語について衝撃的な説明があります.(この続きを読んでください.)

強い研究室はトップダウンもボトムアップも強い

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カンブリア宮殿の12月15日,22日の放送を見ました. ゲストはユニクロを展開しているファースト・リテイリングの会長兼社長 柳内正さん.

組織論について話が及んだときに,次のように話していました.

強い会社はトップダウンもボトムアップも強い

会社が大きくなったら,もっと強くトップダウンしなくてはいけないし,もっと強く分権しなくてはいけない. これらは全部バランスの問題.

本当にいい会社はトップダウンも強いし,分権も強い.

現場の人が一番よく知っているし, その分野の人が一番よく知っている.

社長は知らないですよ.

研究室でも,強いところは,トップが強いだけでなく,研究している現場の人も強くて,研究室をいい方向に引っ張っているんだと思います.

実際にその研究に取り組んでいる人が一番よく知っていて,教授は知らない—というくらいがいいでしょう.

自分でやってみて初めて身に付く

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今月の日本経済新聞のコラム「私の履歴書」の著者は経済学者の小宮隆太郎さんです.

小宮さんが,昨日(12月26日)の回で,ご自身がテニス好きであることに触れ,次のように述べています.

テニスは経済学に通ずるところもある.

本でグランド・ストロークやスマッシュをどうするかを読んでいるだけではだめで,やはり球が来たときに自分で打ってみて,何遍も失敗して,しばらくたって身に付いてくる.

経済理論が身に付くというのもそれと同じで,その理論を使った論文をいくつか読み,さらに自分もそのような論文を書いてみて初めて身に付く.

教科書を読むだけではだめだ.

* 読みやすくするため,段落を設けました.

プログラミングの授業で私が学生に言っていることと良く似ています.

私は自転車の乗り方に例えています.

プログラミングでも,研究でも,そしてテニスでも,自転車でも,本を読んでやり方を勉強しても,「わかる」だけで「できる」ようにはなりません.

自分でやってみて初めてできるようになります.

体・技・心——一番大切なのは体力

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12月8日放送の「カンブリア宮殿」を観ました. ゲストはプロ・ゴルファーの青木功さん.

この番組の中で,青木功さんが次のように言っていました.

体・技・心

人間は体力なんだ.

技術も心もその後のプラス・アルファーだけだよ. 技術だとか心だとかいちいち説明する必要はない.

体力があれば何でもできるよ.

これは,アスリートだけに限りません.

ガリバー・インターナショナル 社長の羽鳥兼市さんは,週5日,夜に皇居の回りを走っているそうです. そして,その理由を次のように言っていました.

血液が活発に循環するから,ものの考え方がクヨクヨしなくなる.

発想がプラス思考になるしね.

ローソン 社長の新浪剛史さんも,ジムで体を鍛えており,次のように言っているそうです.

厳しいビジネスのトップで決断するには,体力が欠かせない.

研究も最後は体力勝負です.

体調を崩していると,論文執筆もプログラミングもはかどらないし,そもそもいいアイデアが浮かんできません.

集中してその問題についてひたすら考え続けるための体力が必要です.

ちょっと前の新聞に載っていた話ですが,新聞を捨ててしまう前にメモしておきます.

2008年9月22日付朝刊19面(教育)のコラム「教育」で,ル・マン24時間耐久レースに大学の研究室で挑戦している東海大学教授の林義正さんが,自分の教育方針について次のように述べています.

私は以前,自動車メーカーの研究開発部門に在籍していた. 当時痛感したのは,偏差値教育のためなのか,新規大卒者は知的能力 (ability) はあるが実現能力 (competence) が不足しているということだった.

大学で習った専門基礎科目の知識を駆使した計算はできる. だが,その結果を活用しハードウェアとしてまとめるための設計ができない.

工学的な課題突破力が備わっていないのだ.

企業が求める即戦略にはほど遠い.

情報系では「ハードウェア」を「ソフトウェア」に置き換えればいいでしょう.

つまり,条件分岐や繰り返し,配列といった要素知識は理解しているが,一つの目的を達成するための新しいソフトウェアを設計することができない——ということです.

こうした力を身につけるには,一般に行われているような系統的に教えていく演繹的教育ではなく,具体的事例から,それに応用されている基礎学問を解き明かす帰納的な教育が効果的だ.(略)

応用研究,実用化研究ともに,ハードウェアを中心に,焦点を真のものづくりに絞っている.

学生が研究に興味を持てば,自律的に創意工夫をこらし成果を出すようになる. 成果が出たら,必ずコメントを加え,褒める. これが次の原動力になるのだ.

真のものづくりには,責任が伴うこともしっかり教え込む.

課題突破力(私は問題解決力と呼んでいます)を自分で身につけるには,教科書に書いてあることを基礎から順番に勉強するだけでなく,ときには,具体的な例題に取り組み,そこに使われている基礎技術を見つけ出すことが大切だということです.

プログラミングの場合,テキスト・ファイルを読み込んで表示するプログラムを作るだけでもかなり勉強になります.

誰もが経験したことがないル・マン・カーの設計には,多くの困難が立ちはだかるが,それをブレークスルーするのは,情熱と基礎学問と創造性だ.(略)

エンジニアは課題解決者であり,課題突破には創造性が不可欠である. その課題に,私の研究室は世界最高峰のレースを取り上げた.

頂点に立てば,他の山も観ることができる. ここで育った学生が,日本のものづくり現場で縦横無尽に活躍することを願っている.

プログラミング・コンテストやオープン・ソース・プロジェクトなど,ソフトウェアの世界でも多くの困難を伴う高い山はたくさんあります.

私は,RoboCupサッカーカブロボのプログラムを作って遊びました. 戦略についてのアイデアを練り,それを実現するプログラムを作ることで,プログラミングの勉強になるだけでなく,問題解決力が養われたと思います.

教科書に書いてある順番に一から勉強しても,教科書に載っていることしかできません. 具体的な例に取り組むことが大切です.

(注)ブラウザー上で読みやすくするため,引用した文章に適宜段落を追加しています.

NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の10月21日放送分を観ました.

前回が100回目だったということで,これまでに登場したプロフェッショナルの発想法とプレッシャー克服法の共通点を脳科学の観点からまとめたスペシャルでした.

発想法についてのところが参考になりそうだったので,メモしておきます.

ひらめきの極意 プロのアイデア発想法

とことん考えてから,寝る

眠っている間に経験や知識が整理されていく. そのため,一度寝るとアイデアが浮かびやすくなる.

  • 東京大学 教授 古澤明さん曰く「迷ったら寝る.次の朝に『あ,なんだこういうことね』っていうふうに思うことがよくありますね.」
  • スタジオ・ジブリ 映画監督 宮崎駿さん曰く「人間の作業能力は起きた瞬間がいちばん高いと僕は思っているんですよ.15分でもいいから寝ると違いますよ.」
  • 漫画家 浦沢直樹さん曰く「考えて,考えて,一日悩むと,さすがに脳が勘弁してくれって感じになって,眠りに落ちちゃって,気絶したみたいになって,すーっと.で,眠りが覚めるころに,『あっ,わかった』って起きたのが何度もあるんですよ.」
考え事は「場所」を選べ

脳が外からの情報に邪魔されない所を選ぶのがポイント. ひらめきは,ある程度情報を遮断した所で生まれる.

  • キリン・ビール 商品企画部長(当時) 佐藤章さん曰く「(タクシーでの移動中に)ポロンと出てくるときがよくありますね.」
  • 慶應義塾大学 教授 小池康博さん曰く「(国際会議の帰りの飛行機の中での)『あっ,あぁ考えていたけど,昨日あの人はあぁいってたよな』というところが,自分の一番のミキシングです.」
  • アート・ディレクター 佐藤可士和さん曰く「アイデア自体は,お風呂の中とか,そういう一人になるとき(に浮かんでくる).」

私も,寝ている間に考えがまとまるということはよくあります.

夜中に目が覚めて,浮かんだアイデアが消えないうちにすぐにメモをとったということもあります.

また,考え事をする場所を選ぶというのもよくわかります.

私が学生のころは通学中の電車の中を考え事の時間にしていました.

研究室でパソコンに向かっていても,メールをチェックしたり,ネットで調べたりできてしまい,考え事に集中できません. ですから,研究室は実は考え事に向かない環境ですね.

この番組を見て,最近は考え事をするための決まった場所がないということに気づきました. これはマズいので,これからは意識的に作るようにします.

研究は楽しくやろう

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ボストン・レッドソックス投手の岡島秀樹さんが,日経ビジネス・アソシエ2008年4月15日号のロング・インタビューの中で,仕事は楽しんでやった方がいいと述べています.

——メジャーを経験して,日本の野球をどう思いますか.

選手は本当に楽しいのかなと思います. もっと楽しくやってほしい. 仕事は絶対に楽しくやった方がいい結果が出るし,楽しくなかったらストレスがたまるだけです.

こう考えるようになったのは,2006年に日本ハムに移籍した経験が大きかったんです. 当時のトレイ・ヒルマン監督(今年からカンザス・シティ・ロイヤルズ監督)はメジャーに近い野球を教えてくれました.

具体的に言えば,団体練習が少なくて,個人練習の時間をすごく作ってくれた. だから自分で考えて練習できるようになり,楽しく野球ができたんです.

この練習は自分に合っているなと思うものを積極的に取り入れ,自分を信じて練習する. それがいい結果につながれば自分も納得するでしょう. これが日本ハムのやり方でした.

これに対して,ジャイアンツ時代は,上から言われた練習を嫌々やっていました. それで結果が出なくても,結局,自分に跳ね返ってくるんです. ジャイアンツ時代はしっくりこなかったことが,日本ハムに行って分かりました.

* 引用するにあたり,読みやすくなるよう段落を増やしました.

これも,研究でも同じことが言えますね.

この論文を読めとか,これについて勉強しろとか,この実験はこうやれとか,研究に関するすべてのことをいちいち教員から指示することもできますが,それではやらされる人は楽しくないと思います.

自分なりにいろいろ工夫して,それがうまくいけばすごくうれしいし,研究が楽しくなります. 研究を楽しめるようになると,いい結果が出るようになります.

だからこそ,学生にはあまり細かい指示を出さずに,自分で工夫する余地をたくさん作るようにしています.

中には,まったく工夫せずに指示されたことしかやらない学生もいますが,そういう人はあまり成功しないと思います.

研究は楽しくやりましょう.

日本コムシス会長の島田博文さんが,日経ビジネス・アソシエ2008年4月1日号のコラム「私の始末書」の中で,一生かけて自分に合った仕事を探すことが大切だと述べています.

(入社後10年ほどで全く希望していなかった部署に異動になり,半年ほど落ち込んで仕事ができなかったけれど,気持ちを切り替えて一所懸命働いたら,2年後に行きたかった部署に移ることができたという話を省略)

不本意な異動を命じられたと思っても,それは自分の主観でしかありません. 人間は成長するのです. 本当にその異動が自分にとって不必要なものかどうかは,誰にも分からないことです.

そんなことにくよくよせず,一刻も早く新しい職場に慣れ,力を最大限に発揮することが自分を成長させるのです.

最近,若い人と話をすると,自分探しに夢中になりすぎているんじゃないかと,つい説教をしたくなってしまいます. 自分に一番合った仕事というものを一生懸命探す姿に,いささか疑問を感じるのです.

自分に合った仕事というのはあるのでしょうか.

人間は成長し続けます. 自分に合った仕事とは一生かけて探すものです. 目の前の仕事に応じて柔軟に自分を変えていけばいいものを,ほんの数年で「この仕事は私に合っていない」と結論づけ,異動したい,転職したいと考えるのは,我慢が足りないと思ってしまうのです.(略)

私は就職して以降,終身雇用を前提とした組織の一員として,キャリア選択の自由など感じることなく働いてきました.

こんな私からすれば,今日の若者は選ぶ自由,決める自由を主張する一方で,実はそのストレスに耐えきれず,仕事を辞めたり変えたりしてしまっているのではないかと思います.(略)

辛いことに遭遇した時は,大きな視点で物事を捉え直すことが大事です. 好きではない仕事に取り組んだ経験さえもプラスにできたら,こんな幸せなことはないと思います. その努力をすべきだと思います.

* 引用するにあたり,読みやすくなるよう段落を増やしました.

学生の就職活動でも同じですね.

就職状況がいいと,学生が会社を選ぶことができるため,自分に一番合った会社を一所懸命探しがちになります. その結果,たくさんの数の面接を受け,手に余るほどの内定を取り,どこにするかまた悩んでいます.

しかし,自分に合った会社なんて自分が成長すれば変わるものだし,今の時点でいい会社でも数十年後までいい会社かどうかなんてわかりません.

この話,研究でも同じですね.

新しく卒業研究を始める学生の中には,自分の興味があるテーマを卒業研究にできない場合もあります. その理由は,そのテーマが研究に適さないものだったり,研究室で誰かがやらなければならないテーマがあったりと様々です.

自分が希望しているテーマでなくても,そこから多くのことを学び,自分のプラスにすることができれば,最初から自分が希望したテーマをできた人よりも大きく成長できると思います.

今の自分に合った環境をムリに探すのではなく,今の環境に合わせて自分を成長させましょう.

東京大学教授の宮田秀明さんが,NBonlineのコラム「経営の設計学」の2008年4月4日の記事「去りゆく学生に感じた才気」の中で,先人が成し遂げた知識を学ぶことが大切だと述べています.

昨年12月の初め、Y君にメールを送った。 「今日のミーティングにも参加しないということは、卒業を諦めたということですね」。(略)

Y君は強すぎて世の中の厳しさを知らない

学生にはいろいろなタイプがいる。頭脳はある程度以上の者が選抜されているのだが、体力や精神力などの強さや性格的なものは千差万別である。

手取り足取りしなくてはならない虚弱な学生もいたりして、「手を取ったり、足を取ったりはしてあげます。 でも、大学だから抱きかかえて卒業させるようなことは絶対にしないからね」と言わなければならないケースもある。

Y君は強いコンピテンシーを持っていそうだったから、そんな心配はいらなかった。 部活でも成果を出していて、日本選抜チームにも入っていた。 しかし、Y君は強すぎて世の中の厳しさを知っていなかった。 こんな学生は徹底的にイジメて大きく育てなければならない。 教師にとっては何の気遣いもしないで教育できる、楽な学生の部類に入る。

彼の論文のテーマは結構ホットなものだ。 自動車組み立て工場ではジャスト・イン・タイム方式が一般的で、なおかつ銭単位の厳しいコスト管理がある。 部品工場の立地問題はコストと輸送リードタイムと在庫管理とのトレードオフに極限が要求される。 もちろん需要変動という、避けて通れない環境条件がある。 ジャスト・イン・タイム方式というのは、自動車組み立て企業の身勝手な方式と言うこともできる。

私の送ったメールに驚いて大学に現れたY君は、「大丈夫です、ちゃんと卒論をやります」と言う。 そして在庫と発注の仕組みについて話し始めた。

「僕は......と思うんです。これでいいですね」

私はこう答えた。 「まず勉強しなさい。 在庫と発注の仕方には定型的なものがあります。 勉強してから自分で考えなさい。」

Y君のように才気が先走るような学生は、ごくたまにいる。 私は、「君の考えは間違っている。 まず勉強してから、もう一度来なさい」という言葉を何度も彼に投げかけた。

ある時、「分かりました。勉強してきます」と言って部屋を出ようとするY君を私は引き止め、基本哲学を説明することにした。

「Y君、論語のこんな言葉を知ってる?」。 そして黒板に書いた。

"学びて思わざれば暗し、思いて学ばざれば危うし"

彼に説明した。 「私たちは創造的な仕事をしようと心がけています。 思うこと、自分で考えることは一番大切です。 でも、先人が成し遂げたことはしっかり学ばなければ、それを超えたかどうかも分かりません。 "学ぶ"ことと"自分で思う"ことのバランスは極めて大切です。」

あまり研究室に来ないで一人で勝手に研究するタイプにありがちな話です. (こういう場合の多くは,本人は「研究」しているつもりでも「勉強」にしかなっていません.)

研究室に来ないと仲間や教員と情報交換ができないので,他人の知識を活用することができません. コラムの言葉を借りれば,先人が成し遂げたことを既に学んでいる人の知識を活用できないということです.

特に大切なのは,研究室の教員や先輩が持っている失敗のノウ・ハウを活用することです.

論文や教科書には,うまくいく方法しか書いてありません. そこに書いてないからといっても,それを読んで簡単に思いつくようなアイデアはたいてい既に試みられていて,たいてい失敗しているのです. そのアイデアを実践しても失敗するから,そこに書いてないのです.

また,Linuxや研究ツールのインストール・使い方において,失敗する方法はなかなか書いてありません. ところが,説明の通りにやってもうまくいかないことはたくさんあります.

研究室にはそのような「試したけれどうまくいかなかった」という失敗のノウ・ハウが蓄積されており,これを活用しないと自分も同じ失敗をことになります.

先人は身近な所にもたくさんいます. 後輩であっても自分より先に始めていれば立派な先人です.

先人が成し遂げたこと・成そうとしたが失敗したことをしっかり学びましょう.

仮説を立て,早く行動しよう

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フリービット社長 CEOの石田宏樹さんが,日経ビジネス・アソシエ3月18日号のロング・インタビューのなかで,仮説を立てることが大切だと述べています.

仮説を立てて,まず踏み出す
早く動き,早く失敗して,早く修正
「失敗できる能力」が必要

——最後に,フリービットに採用される条件は失敗できる人ですか.

そこは絶対に重要です.

一番重要なのは努力をする人ですけれど.

あと一つは,仮説を設定する能力ですね. 仮説を持って一歩目を踏み出すと,何が間違っていたのかが分かるんですよ.

逆に調査ばかりしていると,分からなくなってしまうんですよね.

* 引用するにあたり,読みやすくなるよう段落を増やしました.

仮説を立てれば,行動に移すことができます.

研究を始めるときについて考えてみましょう.

「このテーマがイイ」という仮説を立てられれば,その研究を始めるという行動に移すことができます.

ところが,「良いテーマは何か」という疑問を持つだけの人は,調査ばかりしていて実際に研究を始めることができません.

もちろん,立てた仮説が間違っていることもあるでしょう. そのときは,自分の失敗を潔く認めて,その仮説を修正すればいいだけです.

たとえ振り出しに戻ったとしても,一歩も動いていない人よりはぜんぜんマシです.

就職活動でも同じですね.

自分なりの仮説を立て,早く行動しましょう.

指示される前に自分で動こう

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電気通信大学教授の新誠一さんが,Tech-On!のコラム「言いたい放題」の2008年3月4日付けの記事「命令するな,問い合わせで動かせ」の中で,研究室の学生を動かすには命令ではなく問い合わせがいいと述べています.

このコラムも前回に更新してから間が空いてしまった。編集者からも督促されてしまったが,2月は卒論,入学試験,報告書作成に決算と大学人は忙しい。寝る前に6人分の論文を添削して電子メールで送信すると,起きたときには修正版が届いている。このような生活ではコラムを書く余裕もなかった。ご勘弁を。

さて,大学生と私の関係だが,私は指導教員と呼ばれて,彼らを指導する立場である。しかし,実態は彼らに使われているといったほうがよい。(略)

彼ら*1を動かす秘訣は「問い合わせ」である。命令では動かない。

ソフトは命令で動く。サブルーチンを呼び出す「call」命令が代表的である。しかし,人は命令で動くだろうか? 命令は効率的である。小規模なうちは効果的である。しかし,大規模,複雑になると弊害のほうが目立ち始める。たとえば,命令では新しいアイデアは引き出せない。命令で動くシステムは,命令者のアイデア以上の働きは期待できない。(略)

卒論は私の研究の下請けではない。学生諸子の知恵を引き出す学習の場である。紆余曲折はあったが,卒論は一段落である。楽しませてくれた彼らへ謝意を捧げることで今回の締めとしよう。お疲れ様でした。

*1: 本文中では「このような猛者」です.省略した部分を指し示ているので置き換えました.

ポイントは「命令」する替わりに「お願い」するのではなく,「問い合わせ」をするというところですね.

仕事や研究の都合上,どうしてもお願いしなければならい場面もありますが,なるべくなら,学生には命令やお願いをせずにすませたいものです.

その一方で,学生の立場からすると,先生から命令やお願いされることはほとんどない——ということを前提にして動くべきだと言えます.

「...について勉強しておけ」と言われなくても勉強する,「研究室に来い」と言われなくても行く,「進捗状況を報告せよ」と言われなくても報告するといった自発的な行動が必要です.

指示される前に自分で動きましょう.

asahi.comの2008年1月31日付けの記事に,論文の「生産費」についての面白いデータが載っていました.

東大の論文、1本1845万円 国立大でコスト最大級

東京大学の論文の「生産性」が国立大学の中で最低レベルにあることが文部科学省科学技術政策研究所の調査でわかった。研究費を論文数で割った1本当たりの「生産費」を比べた。東大など旧7帝大はおしなべて生産費が高く、旧帝大偏重が指摘されてきた国の研究費配分のあり方に一石を投じそうだ。

同研究所が各大学の06年度の財務諸表で、国からの科学研究費補助金や企業からの受託金など広義の研究費を集計。国内外約3万1000の科学や医学の専門誌に掲載された一定の水準以上の論文の数で割って、論文の生産費を算出した。

その結果、東大は論文数は4553本で1位だったが、1本当たりの生産費は1845万円。東大より上の8校は東京外国語大や一橋大といった文系などの大学で論文数が少ないために生産費が高く出ているだけで、実質的には東大が最も高かった。論文数700以上の大学に限ると、以下、大阪大、東北大、京都大と続いた。1000万円未満の大学が55校ある一方で、旧帝大はいずれも1000万円を上回った。

順位 大学名 「生産費」 論文数
1 東京大 1,845万円 4,553
2 大阪大 1,735万円 2,581
3 東北大 1,622万円 2,669
4 京都大 1,592万円 3,111
5 北海道大 1,228万円 2,062
6 名古屋大 1,228万円 1,981
7 東京工業大 1,088万円 1,829
8 九州大 1,071万円 2,596
9 熊本大 1,039万円 713
10 筑波大 942万円 1,429
国立大の論文1本あたりの「生産費」(06年度,論文数700以上).

この記事を読んで東大や旧帝大にネガティブなイメージを抱いた人は記者の術中にハマっています.

まず,このデータは,研究成果が論文だけではないことを無視しています. とくに,お金になる特許のことを考慮していないのは大問題です.

次に,コストが高くたって,それに見合う価値が生み出されていれば,何の問題もありません.

例えば,自動車ブランドごとのコストを比べるとレクサス,フェラーリ,ポルシェなどがスズキやダイハツに比べて上位になるのは間違いありません. しかし,それは価値が高い車を作っているためであって,コストそのものが高いことは悪いことではありません.

京大の山中伸弥教授が,新型万能細胞の研究で,国から今後5年間に100億円規模の研究費をもらえることになりました. これにより,山中先生の論文のコストがものすごく上がってしまいますが,この研究で生み出される特許や論文,育成される研究者の価値が総額で100億円を超えればいいのです.

また,この統計データが「論文数700以上」に限定しているところに注意が必要です. つまり,この制限を外すと上位にランク・インしてしまう大学があるということです.

実際に,元の資料を確認すると,東大は9位,九大は24位です. 1位の東京外語大は,論文数6!,論文1本あたりのコストは1億6,658万円!です.

というわけで,コメントを求められた東大の副学長もこう言っています.

東大の岡村定矩(さだのり)副学長(研究担当)は「いろいろな統計データがあるので、とくにコメントすることはない」としている。

ちなみに,元の資料(国立大学法人の財務分析)では,次のような指標を用いてクラスター分析していて,結構面白いです.

  • 教育:教育経費率,教員あたり学生数,学生あたり教育経費
  • 研究:研究経費率,教員あたり博士課程学生数,教員あたり研究経費,論文数,特許公開件数
  • 社会貢献:国等以外の受託事業費及び寄付金収益

学生のうちは楽をするな

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京都市立堀川高校校長の荒瀬克己さんが,日経ビジネス・アソシエ2008年2月5日号のロング・インタビューの中で,若いうちは楽をするなと述べています.

——「1年で国公立大学現役合格者を100人増やした」「堀川の奇跡」.このような見出しを,ここ数年多くのメディアで見かけるようになりました. 2001年は6人だった国公立大学の合格者数を1年で一気に106人まで増やした. 以降毎年,同合格者数は100人を超え,30人以上の京都大学合格者を出し続けている躍進ぶりは,様々な教育関係者の間で注目されています.(略)

「二兎を追うものは一兎も得ず」と言いますが,改革を進めてきた中で,私たちはあえて「二兎を追え」という言葉を生徒たちに託してきました. 「大学受験に必要な学力を身につけるために知識を習得すること」,つまり偏差値等の見える数字. もう1つは「自ら考えて取り組む勉強」,これは目に見えにくい数値化できない力. この2つは教育には不可欠だと考えた.

目に見える数字は,周囲から個人を判断する1つの材料になるし,チャンスをつかむための要素になる. でも,見える数字だけに固執するのはいけない. だって一流大学に入るのが人生のゴールじゃないでしょ. 大学で何を勉強し,どんな社会人になりたいのかが大事. その人から偏差値を引き算して何が残るのか,それが社会に出て最も重要視される要素ですよね.(略)

探究基礎(という堀川高校で行われている授業)を例に出して説明しますと,半年単位でホップ・ステップ・ジャンプという3つのステージを経験します.

ホップは入門編. コンピュータ・ソフトの活用方法,文の構造化等論理的思考力と表現力を学び,ディベートもやります. この期間には5人程度のグループでテーマ設定をして論文を書く. それを英訳して発表するんです. その時間は司会も英語なら質問も答えも英語. だから極めて静かに進行する(笑).

1年生後期からは希望するゼミに分かれる. ステップです. 80人単位での授業ですが,10のゼミに. 数学や天文,国際や文学といったものがあり,この段階でもグループ研究を行い,論文にまとめます.

ステップの最終段階には,2年生のジャンプで行う個人研究の企画書を提出します. それを生徒と担当教員とティーチング・アシスタントの大学院生でよってたかって揉む. テーマを確定し,ジャンプでその研究に入って行きます.

最終的に論文にまとめる前には,ポスター・セッション. 一畳大のパネルに,立てた仮説や研究の経過,結論,今後の課題を書いて発表します. 大学生やゼミ選択を目前に控えた1年生等が質問,指摘をし,発表者がそれに応えるという過程を経て,論文にする.

——生徒たちの負担は大きいというか,大変ですよね.

そうですね. 忙しいと思いますよ.(略)

でも「しんどいけど楽しい」って言う生徒が多いのも事実. 少々荒っぽいかもしれませんが,私は訓練期間に楽な状態を作る必要はないと思うんです. 結構大変な状態の中で,生徒には考えてほしい. どのように時間を配分するか. 時間の管理能力はとても重要な,社会で活きる力だと思います. それを含めて,ちょっと背伸びできる環境を用意する事が,生徒にとって良い経験になると思います.

また,ワタミ社長の渡邊美樹さんが,日経ビジネス・アソシエ2008年1月15日号のコラム「ミキイズム 渡邊美樹が語る仕事そして夢」の第66回「30歳でプロ,40歳で一流に,キャリア形成は10年周期で」の中で,20代は仕事漬けの日々を送れと述べています.

「30歳までにプロになりなさい」——. 私がワタミ社員によく言っているフレーズです. 今は本物が評価される時代,言い換えればプロにならなければ生き残れない時代です.

プロとは,その仕事に対して周りの人が喜んでお金を払ってくれる人のことです. サービスのプロ,介護のプロ,調理のプロ,経理のプロ.... その技術と経験があるがゆえに,みんながお金を出したいと思う仕事を30歳までに身につけなければいけません.

20代は仕事漬けの日々を送れ

22歳で大学を出て8年間でプロになるためには,よほどの努力が必要です. とにかく20代は死に物狂いでがむしゃらに仕事をしてプロになる. 仕事漬けの日々を送ってほしいと思います.

決して20代で趣味に没頭してはいけません. 20代は一番元気で吸収力のある時期です. その時期に例えばゴルフなどにはまってしまったら大変なことになります. 仕事が一人前になっていないのにゴルフでシングル・プレーヤーになってしまう可能性さえあります. そうなればますますゴルフが面白くなり,仕事がおろそかになるでしょう. とにかく20代は仕事オンリーでいいのです.

学生のうちにいろいろなことを経験しておくことは大切なことですが,遊んでいてはいけません. 卒業したOBの中には,「会社に勤めると自分の時間が持てなくなるから学生のうちに遊んでおけ」というアドバイスをする人もいますが,その必要はありません.

渡邊さんのコラムには20代のゴルフの例が出ていますが,学生でも同じことです. 学生のうちに趣味に没頭してしまうと,勉強や研究がおろそかになります. また,学生のうちに没頭できる趣味を作ってしまうと,働き始めてから仕事がおろそかになる原因となってしまいます.

部活・アルバイト・ボランティア・海外旅行などは,いずれもいいことだと思いますが,やるからには自分の成長の糧となるように,10年後・20年後の自分が「時間の無駄ではなかった」と納得できることだけをやるべきです.

あなたは「学生のうちしか時間がないから」と自分に言い訳して,本当にやるべきことから逃げていませんか?

学生のうちは楽をしないでおきましょう.

困難な課題に挑戦しよう

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昨日(2007年11月30日)の日本経済新聞の朝刊の第2部の「進学特集」に,産業界で活躍している人たちが社会人となる学生に求めているのは積極性や前向きさだと書かれていました.

社会人となる学生に期待していること

学生が身につけておくべき能力は?
  1. 豊かな一般知識・教養(73.9%)
  2. 基本的なビジネス・マナー(72.4%)
  3. コミュニケーション能力(63.4%)
  4. (以下省略)
学生が身につけておくべき姿勢や態度は?
  1. 協調性(63.2%)
  2. 積極性(57.5%)
  3. 前向きさ(55.3%)
  4. (以下省略)
最近の新入社員が不足している能力は?
  1. 基本的なビジネス・マナー(67.5%)
  2. 豊かな一般知識・教養(49.2%)
  3. コミュニケーション能力(48.8%)
  4. (以下省略)
最近の新入社員が不足している姿勢や態度は?
  1. 打たれ強さ(タフさ)(43.2%)
  2. 積極性(35.0%)
  3. 協調性(33.8%)
  4. (以下省略)
ビジネス・パーソン1万人調査より,複数回答可

失敗が許されることが学生の特権です. 失敗を恐れずに,困難な課題に「積極」的に挑戦しましょう.

自分の力だけでは解決できない困難に挑戦することで初めて他人に協力を仰ぐことになり,その結果,「協調性」が身につくようになります.

ただし,他人に協力を仰ぐためには「コミュニケーション能力」が必要となります. そして,「基本的なマナー」が身についていないと先生や先輩に協力してもらえません.

また,課題が困難であれば困難であるほど,失敗もするでしょう. その失敗を「前向きに」とらえ,何度も工夫して挑戦することで,「打たれ強さ」を身につけることができます.

あなたは社会で必要とされる能力や姿勢・態度を身につけていますか?

「就活」をする前に,困難な課題に挑戦しましょう.

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