2009年9月アーカイブ

英国のブラウン首相が,アラン・チューリングさんに対して謝罪文を発表しました.

この謝罪文の翻訳をはやしさんがご自身のブログで公開されています.

チューリングさんは,計算機科学の分野で特に大きな貢献をしており,ACM(アメリカ計算機学会)は計算機科学分野のノーベル賞に相当する賞に「チューリング賞」という名を付けています.

また,人工知能の分野では,機械が知能を持つかどうかを判定する「チューリング・テスト」を考案したことで有名です.

チューリングさんは,第二次世界大戦中に極秘でドイツ軍の暗号解読に従事していたことから,その偉大な業績は長年にわたって非公開とされていました. また,同性愛者であることを理由にして迫害を受け,非業の死を遂げました.

この話を詳しく知りたい人には,サイモン・シンさんの「暗号解読」が面白くてオススメです.

今回の謝罪文は,この迫害が間違いだったことを認めたものです.

人工知能に関わる者としては,うれしいニュースでした.

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9月12日にお台場にある産業技術総合研究所臨海副都心センターで行われた第3回SIG-FIN研究会に参加しました.

招待講演は,スパークス・アセット・マネジメントの水田孝信さんと小林悟さんによる「機関投資家が人工知能に期待すること」でした.

水田さんのお話は,災害や伝染病などへの対策にシミュレーションを活用しているように,ファイナンスの分野でも金融危機への対策をマルチエージェント・シミュレーションでできるのでないかというものでした.

小林さんのお話は,クオンツ(数式に基づいて機械的に投資銘柄を決定して運用する投資家)の立場から,うまくいっていた投資戦略がうまくいかなくなるような市場環境の変化を検出する方法を開発してほしいというものでした.

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私も,次の2つの論文を発表しました.

1件目は強化学習に関する研究です. 従来の強化学習は割引収益の期待値を最大化するものなので,複利リターンは最大化されません. そこで,本研究では,割引複利リターンの対数の期待値を最大化する強化学習を提案しています.

2件目は共同で行っているテキスト・マイニングに関する研究です. 本研究では,日銀が毎月発表している月次報告を分析し,月末の金利を予測します. 今回の論文は,その予測に基づいて運用したらどのくらいのパフォーマンスになるのかを調べたものです.

今回も,金融業界の企業からも多くの方に参加していただき,現場の立場から積極的にコメントをいただきました. おかげさまで,実りのある良い研究会になったと思います.

研究会にご協力いただいたみなさんに厚く御礼申し上げます. ありがとうございます.

「ハッピー・フライト」を観ました

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「ウォーター・ボーイズ」と「スウィング・ガールズ」の矢口史靖監督の作品です.

飛行機の運航に携わる人たちが働く姿を観ることができ,とてもいい映画です.

人工知能学会誌9月号が届きました.

特集は「日本語コーパス」です.

人工知能学会誌, Vol. 24, No. 5

  • 特集「日本語コーパス」多様な目的に適した形態素解析システム用電子化辞書
    伝 康晴
  • MeCabなどの形態素解析システムが使っている辞書UniDicの紹介.

    形態素解析のときに使われる辞書は解析結果に大きな影響を与えるので,どのような特徴があるのか知っておくべき. そして,標準で用いられている辞書の語彙が足りないときは自分で追加したほうがいい.

  • 解説 セマンティック・ギャップを超えて—画像・映像の内容理解に向けて—
    井出 一郎, 柳井 啓司
  • パターン認識に対する統計的アプローチとメタ・データ・アプローチについて.

    テキスト分類で使われるbag-of-words(単語の出現位置や出現順序は考えずに文書を単語の集合として扱うアプローチ)にヒントを得たbag-of-features(特徴の出現位置や出現パターンを考えずに画像を特徴の集合として扱うアプローチ)がパターン認識で効果的のは興味深い.

  • 座談会 システム開発論文座談会より
    山川 宏, 森田 千絵, 山口 高平
  • システム開発論文特集に投稿した企業所属の人を招いて,システム開発論文はどう評価(査読)されるべきかについて議論.

    システム開発論文についての査読ポリシーみたいなものが述べられていて参考になる. ちょっと読みにくいのはガマン.

  • 学生フォーラム AI Inter-view 第52回 三宅美博氏インタビュー「『間』を作ることで創造的な研究を
    馬場 雪乃, 亀田 尭宙
  • 薬学博士がいかにしてコミュニケーションの研究をするに至ったか.

    とても参考になる話だったので,別の機会に紹介したい.

ACM学会誌9月号のお知らせが届きました.

表紙の見出しは「The status of the P versus NP problem」です.

Communications of the ACM, Vol. 52, No. 9

  • Editor's letter: The financial meltdown and computing
    Moshe Y. Vardi
  • 今回の金融危機の原因のひとつが複雑すぎてだれも理解できず,危険性も限定的にしか評価できないような信じられないくらい高度化されたグローバルな金融システムであることを指摘し,我々(コンピューターに関係する科学者・技術者)はそれを生み出した「情報技術」には社会的な影響力があることを理解すべき(だから,もっと分かりやすさを重視してシステムを作るべき)だと主張している.

  • Technical perspective: They do click, don't they?
    Marc Dacier
  • スパム・メール・マーケティング・マイニングについての解説.

    本題からはそれるけど,コンピューター・サイエンス(とくにセキュリティ分野)の分野の研究者は,他の人が同じ結果が得られるような実験を準備しなければならないという風潮があるが,これは「チェンジ」すべきであると主張している. そうでない実験の結果からも学べることはたくさんあるというのがその理由.

  • Spamalytics: an empirical analysis of spam marketing conversion
    Chris Kanich, Christian Kreibich, Kirill Levchenko, Brandon Enright, Geoffrey M. Voelker, Vern Paxson, and Stefan Savage
  • スパム・メールのコンバージョン率を調べてスパム・メール・マーケティングの効果を分析した研究. これもデータ・マイニングの応用例のひとつ.

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9月12日(土)にお台場の産総研でSIG-FINの第3回研究会を行います.

プログラムは下記の通りです.

招待講演として,スパークス・アセット・マネジメントの水田孝信さんと小林悟さんに「機関投資家が人工知能に期待すること」についてお話しいただきます.

実際の金融の世界と触れ合う機会の少ない研究者にとっては,現場のニーズを知る大きなチャンスだと思います.

その他,一般募集によって集まった研究発表が12件あります.

みなさまお誘い合わせの上ご参加いただければ幸いです.

詳しくはこちらの公式案内のページをご覧いただきますようお願い申し上げます.

よろしくお願いいたします.

プログラム

(一般発表は 発表20分, 質疑応答5分)
9:30 開場
10:00-10:50 セッション 1: テキスト・マイニング
  1. インターネット株式掲示板の投稿内容を用いたファクターモデルの検討
    阿部有希, 梅原英一, ○諏訪博彦, 太田敏澄
  2. テキスト情報による金融市場の逐次外挿予測
    ○和泉潔, 後藤卓, 松井藤五郎
11:00-11:50 セッション 2: 人工市場, ゲーム理論
  1. 人工市場を用いた株式市場における空売り規制の有効性分析
    ○八木勲, 水田孝信, 和泉潔
  2. 進化ゲーム理論を用いたオプション市場分析
    ○吉川満
11:50-13:00 昼食
13:00-14:00 招待講演
14:05-14:55 セッション3: 意思決定,行動ファイナンス
  1. FXディーラーの意思決定法の比較と考察—FXの現場からAI研究者への提案—
    ○福住敞綱
  2. 株価モメンタムと出来高の関係と投資家の株価トレンド追随行為
    ○三輪宏太郎, 植田一博
14:55-15:15 コーヒー・ブレイク&ビジネス・ミーティング
15:15-16:30 セッション 4: 市場分析,データ・マイニング
  1. 板情報を用いた市場変化の分析
    ○西岡寛兼, 鳥海不二夫, 石井健一郎
  2. 金融市場の網羅的高精度データを用いた市場状態の定量化
    ○佐藤彰洋
  3. Bank Run Modeling and Deposit Withdrawal Estimation for Financial Crises
    ○Katsutoshi Yada, Takashi Washio, Yasuharu Ukai, and Hisao Nagaoka
16:35-17:50 セッション 5: 機械学習
  1. Advances in Portfolio Optimization by Genetic Algorithms
    ○Claus Aranha and Hitoshi Iba
  2. ファイナンスのための強化学習
    ○松井藤五郎
  3. 進化計算手法に基づく外国為替の自動取引
    ○藤原健太,伊庭斉志
17:50 終了

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