ちょっと前の新聞に載っていた話ですが,新聞を捨ててしまう前にメモしておきます.
2008年9月22日付朝刊19面(教育)のコラム「教育」で,ル・マン24時間耐久レースに大学の研究室で挑戦している東海大学教授の林義正さんが,自分の教育方針について次のように述べています.
私は以前,自動車メーカーの研究開発部門に在籍していた. 当時痛感したのは,偏差値教育のためなのか,新規大卒者は知的能力 (ability) はあるが実現能力 (competence) が不足しているということだった.
大学で習った専門基礎科目の知識を駆使した計算はできる. だが,その結果を活用しハードウェアとしてまとめるための設計ができない.
工学的な課題突破力が備わっていないのだ.
企業が求める即戦略にはほど遠い.
情報系では「ハードウェア」を「ソフトウェア」に置き換えればいいでしょう.
つまり,条件分岐や繰り返し,配列といった要素知識は理解しているが,一つの目的を達成するための新しいソフトウェアを設計することができない——ということです.
こうした力を身につけるには,一般に行われているような系統的に教えていく演繹的教育ではなく,具体的事例から,それに応用されている基礎学問を解き明かす帰納的な教育が効果的だ.(略)
応用研究,実用化研究ともに,ハードウェアを中心に,焦点を真のものづくりに絞っている.
学生が研究に興味を持てば,自律的に創意工夫をこらし成果を出すようになる. 成果が出たら,必ずコメントを加え,褒める. これが次の原動力になるのだ.
真のものづくりには,責任が伴うこともしっかり教え込む.
課題突破力(私は問題解決力と呼んでいます)を自分で身につけるには,教科書に書いてあることを基礎から順番に勉強するだけでなく,ときには,具体的な例題に取り組み,そこに使われている基礎技術を見つけ出すことが大切だということです.
プログラミングの場合,テキスト・ファイルを読み込んで表示するプログラムを作るだけでもかなり勉強になります.
誰もが経験したことがないル・マン・カーの設計には,多くの困難が立ちはだかるが,それをブレークスルーするのは,情熱と基礎学問と創造性だ.(略)
エンジニアは課題解決者であり,課題突破には創造性が不可欠である. その課題に,私の研究室は世界最高峰のレースを取り上げた.
頂点に立てば,他の山も観ることができる. ここで育った学生が,日本のものづくり現場で縦横無尽に活躍することを願っている.
プログラミング・コンテストやオープン・ソース・プロジェクトなど,ソフトウェアの世界でも多くの困難を伴う高い山はたくさんあります.
私は,RoboCupサッカーやカブロボのプログラムを作って遊びました. 戦略についてのアイデアを練り,それを実現するプログラムを作ることで,プログラミングの勉強になるだけでなく,問題解決力が養われたと思います.
教科書に書いてある順番に一から勉強しても,教科書に載っていることしかできません. 具体的な例に取り組むことが大切です.
(注)ブラウザー上で読みやすくするため,引用した文章に適宜段落を追加しています.


コメントする